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スティーヴン・キングを読む。

2005-07-27 19:00:24

テーマ:映画の周辺

「Secret Wondow」を見て、キングの小説を猛然と読みたくなった。「秘密の窓、秘密の庭」を読み返す。それで思い出したのだが、キングの小説は読み続けることが至福なのだ。映画で見た直後なのに、本を読んだ方がイメージがふくらむ。不思議な体験だ。それだけキングの小説は含みが多い。

「秘密の窓。秘密の庭」に興味深い一節ががある。まさに俺がキングの小説に感じていることを、作中のモートが、表現している。

「もしかしたらシューターはほんとうの作家なのかもしれない。彼は主要な必須条件をふたつとも具えている。最後まで聞きたいと思わせるような話し上手だ。たとえ結末がどうなるか見当はつくにせよだ。それから口から出まかせのホラ話をきいきいと甲高い声でしゃべりまくる。」(文春文庫「ランゴリアーズ」 507ページ小尾芙佐 訳)

誰かに、何読んでるの?と聞かれ、どんな話?と言われて、ストーリィを説明すると困ったことになる。たとえば「ペット・セメタリ」。「インディアンの呪いが・・・・」。あるいは、「やせる男」。「ジプシーの呪いで、食べても食べても・・・・」。「セイラムズ・ロット(呪われた町)」。「吸血鬼が・・・・」。

子供も笑う設定を、東京に住んでいる俺が今も夢中になって読みふけるのはなぜか?物語が面白いから?サスペンスがあるから?実はそうではないことに気がついた。

主人公の感じ方、話し方、さまざまな物の名前、比喩、表現、固有名詞の数々に圧倒されながら読み続けることが楽しい。自分だけ特別な能力をもってしまう超能力者の「孤独」と「悲しみ」。人間の血を吸うことによってしか生きていけない吸血鬼の「怒り」と「悲しみ」。最愛の子供を、交通事故で失う「恐怖」と「悲しみ」。

饒舌に語られるディテイルこそキングの命だ。細かい部分の積み重ねが、とんでもない物語と登場人物に親近感を抱かせ、読者自身の物語となる。

'You stole my story,' the man on the doorstep said.

これが冒頭の一文。ここからモートと男の描写がペーパーバックの1ページ分ぎっしりあって、男の次の言葉、'Well,' そのあとやっとモートの台詞、'I don't know you'。

目の色、服装、しわ、髪型の想像(テリー・サラヴァスみたいな禿げ頭)、帽子(クェーカー教徒の帽子みたい)、ボタンの止め方、ジーンズのだぶだぶ具合、靴の色・・・・。描写の限りに、こまかく書き込む、ひとつひとつの表現自体が面白い。これがキングの小説の味わいだ。本人曰く、「ビッグ・マックとフライのラージの文体」。 口語中心で、下品な言葉も擬音もオノマトベもいとわない。

シューターの原稿にかけてしまった飲み物は「ペプシ」と書かれているのを見るのも楽しい。映画には、マウンテンデューのボトルが出てきた。どの場面だったかな?ダイナーで話しているような場面だった。緑色の日本で見たことのない形のボトルに「Moutain Dew」の緑と赤のロゴが見える。この映画もキングのようなこだわりを持って作られている。細部こそ楽しい。筋を追うことは二の次。先読みしても意味がない。ミステリではないから。サイコ・スリラーなのだ。モートの視点から見た世界を味わい尽くすのがこの作品の楽しみだ。

ぜひ原作にかぶりついて欲しい。もちろんよい翻訳があるのでそちらを。どれだけ映画「Secret Window」が、原作に敬意を払いその世界を忠実に表そうとしたかがよく分かる。

キング作品の映画化は、駄目な作品も多いが、この「Secret Window」は、監督の優秀さと、ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロの演技によって、キングおたくも満足できる作品になっている。

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