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「一冊の本」1月号 金井美恵子の可笑しさ。

2006-01-04 19:55:39

テーマ:音楽・本・ラジオ

金井美恵子先生の書くものは面白い。金井先生の文章の前には、お茶の水女子大哲学科教授、土屋なんとかという奴の「おもしろ文」なんかゴミだ。

朝日新聞社のPR誌「一冊の本」。

今月号の金井先生の連載タイトルは「目白雑記・2 21 うつうつ日和(ひより)2」。まず、世田谷の忌まわしい一家殺人事件を伝える新聞記事にご意見。手がかりが「新たにわかった」と報道するが、「わかった」の主語が曖昧であると・・。

その通り。

ここを発端に、島田雅彦の文章から「誰も読んでいないような本や誰も見ていない映画に詳しい」の「誰」とは誰のことか?一般に少ない人しか見ていない、の意味だが、この場合「誰」とは島田雅彦自身のことではないか?と丁寧に邪推する。

どうです?このような論理展開こそ「おもしろ文」なのです。どこまでも明晰に切っ先鋭く、やっつけたい相手に斬りつける。俺が学びたい手法だ。

突然「『「ユリイカ』」(そんな雑誌、まだあるんですね)12月号のエッセイに、竹中平蔵と相良直美はそっくりだと書きながら思い出したのだが」なんてネタを繰り出すし・・・。そのあとも、横山ノックそっくりな大学教授、フセインに似ている人の話とか、金井先生がそこで終わらないのは、哲学者フーコーの話題まで展開することだ。

お茶の水女子大哲学科教授土屋!!おまえの週刊朝日の腑抜けた連載に較べて金井先生の書き物がどれほけ密度が高いか研究してみろ!!

さらに、今月の白眉はこんな文章だ。


「<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている」(香山リカ)と言う本は「自分を美人だと思うすべての女性に」と、どちらを書店で買うのが「女性にとって恥ずかしいだろうか?」と疑問を呈される。


そして、やおら、筑摩書房のPR誌「ちくま」に話がおよぶ。以下引用します。


『<雅子さま>・・・・・・』の版元で出しているPR誌「ちくま」の「読者カードから」(凄く嫌な感じに利口ぶった本好き読者のユーモアまじりのつもりの手紙が載っていて、毎月楽しみに読む)には、45歳の会社員の「同じ世代として、同じことを考えていたところなので、妙に納得して読んでしまいました。みんな同じ悩みでいるのかと、選択肢がふえて、自由になった時代の、逆に辛さを考えました」


引用終わり。


原文には、金井先生の気に障った表現に、激しく傍点が振られている。


先生のご指摘箇所は以下の通り。


>妙に納得して読んでしまいました。

>選択肢が増えて、自由になった時代の、逆に辛さを考えました。


どうです?辛辣でしょう?こんな表現はついしてしまいますね。「妙に納得」したり、「逆に」辛さを考えたり。アンタッチャブルの山崎のような口調です。


金井先生の悪態のつきかたは勉強になる。気持ちのいい悪態というのはある。歌舞伎で「助六」が髭の意休に喧嘩をふっかける啖呵を切る場面。弱い立場の者が居直って強い者が言い返せないような言葉を吐くことでスカッとするのだ。権力者が悪態をついても不快なだけ。落語の「大工調べ」にも、威勢のいい啖呵がある。大岡裁きの物語だが、眼目は大工の熊さんが江戸言葉で啖呵を言い立てるところ。ぽんぽんとしゃべる口調がこの落語の醍醐味だ。


「一冊の本」は読みでがある。

一月号をざっと見ても、魚住昭と佐藤優の対談連載を柱に「特集 佐藤優の世界」、宮沢章夫「文学でいく『機械』」、小倉千加子、芝山幹郎、中場利一、金井美恵子、鹿島茂、橋本治まで、俺の信頼する作家、学者、物書きがこんなに名を連ねている。これだけ読むところのある小冊子は少ない。

「ちくま」「波」「一冊の本」「本の話」の最新号を束ねて風呂でゆっくり読みのが俺の楽しみだ。せっかちなので、何か読むものがないと風呂でじっとしていられない。


ただ一つ、今月号の巻頭に、左巻き、本田勝一が頭の悪い文書を書いていて苛立つ。項を改めていちゃもんをつけてやる。

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