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「樹の海JUKAI」 人間の深淵に迫らない愚作

2005-07-20 19:30:25

テーマ:(か行)

はじめに良いところを書く。断っておくがこの映画はくだらない。人の生き死にを描いてここまで生ぬるい作品は評価できない。愚作だ。その上で、好きなところをいくつか。後半に悪口を書こう。
            樹海
富士青木ヶ原の自殺者を巡る物語。オムニバスで4つのエピソードが語られる。

携帯金融のチンピラ役の池内博之。難しい一人芝居を延々と続ける。いい俳優だ。追い込みをかけられ自殺しようとする女。生命力も意志も弱い薄幸な女を小峰麗奈が演じる。この人、好きなんです。美しい。陳腐な東京タワーの置物がチンピラの心に刺さったところがよい。この第二話はよかった。
       街金
        (チンピラ役で存在感のある池内博之)

萩原聖人が、袋詰めにされて遺棄される第一話が時間軸となる。他のエピソードを挟んで映画を進める手法がうまい。萩原が樹海をさまようことで、樹海を説明していく。自殺者たちの遺留品が朽ちていく様がなまなましい。ラジオ、鍋、酒瓶、文庫本。萩原聖人は健闘している。いい俳優だ。
       中村
          (薄幸そうで美しい小峰麗奈)

第三話。自殺者の調査をしている塩見三省演じる探偵。 サラリーマンの津田寛治が自殺した若い女と写真に写っている。不倫を疑う探偵。津田には記憶がない。新橋の飲み屋で看板まで話を続ける二人。感じの悪い店員を中村麻美が好演。この女優さんも好きなんです。ああいう子いるよな、と思わせる。演技のうまさです。
        中村1
           (俺の大好きな中村麻美)

この話、俺は一番頭に来た。倉本總の「北の国から」にある、有名なラーメン屋の場面そっくり。飲み屋の終了の時間で、勘定を催促する店員に「人の生き死にの話をしているんだ!」と激昂する塩見三省。

あほか。勘定は勘定だ!俺は中村麻美を支持する。感じが悪いのは最初からだ。あんな失礼な態度はよくない。そのとききっちり注意すればいいだろ。間違ったことをしたとき怒らずに、店員が正当な要求をしたとき怒り狂う。空気を読め!と言うわけだ。俺はそういう奴が大嫌いだ。塩見三省は味わいのある演技で良いのだが、シナリオが馬鹿だ。若い女がサラリーマンと不倫していればまだ奥行きがあった。それをひた隠しにする男。怪しむ男。陰影が出て来るではないか。人生には毒も必要だ。

このエピソードにこの作品のぬるさが象徴されている。怒鳴って騒ぐ「人の生き死にの話」の底があまりに浅い。同郷の出身だということで意気投合し、カラオケに行く二人。こいつらに何一つ共感できない。静岡から見た富士山が表。「樹海は富士山の裏なんですね」なんていう狭い了見に誰が感心するか!山梨の奴らは山梨が表と思っているのは当然だろ。おまえらの感慨には奥行きがないんだよ。別の視点を意識したことがないんだよ!自殺者について、楽しい思い出ばかり樹海に持っていったからよかった、と言わんばかりの愚劣さに呆れた。大嫌い!

井川遥が自殺者を演じる第四話。 余貴美子、大杉漣と芸達者がまわりを固める。駄目なのは、傷ついた過去のある女を演じる井川遥。太ってますます春風亭小朝に似てきた容貌も、台詞の棒読みも、鈍重な演技も。

シナリオも不快きわまりない。列車のなかで痴漢にあう中学生の描写が最悪。黙って泣いているだけ。精液をかけられてべそをかいているのに誰も警察に通報しない。ハンカチとネクタイを差し出し、拭くように言う大杉蓮も無駄に重厚。かっこつけてる場合じゃないだろ。ネクタイが物語の重要な小道具になっているが、痴漢の精液を拭き取るために使ったものでは汚らしいじゃないか。

意味ありげに、タバコの「セブン・スターズ」とかいう蘊蓄もやめてくれ。使い古されたネタだ。あの男が、井川遥演じる、馬鹿ストーカー女の不倫相手だった、なんてよく見ていてもわからないぞ。映画として失敗しているじゃないか。だから、井川遥が自殺する理由が迫ってこない。バカ女だから死ぬのか、ぐらいだよ。ああ、厭だ、この話。

映画に出てくる自殺者は二人。自殺未遂は二人。

この映画には、人の生き死にを語る上で大事な真剣さがない。人間の心の深淵を少しも見つめていない。甘くて薄っぺらな人間観、死生観に苛立った。人の生き死にの話をすれば、何か伝わると思ったら大間違いだ。この映画は毒にも薬にもならない。誰もこの映画の中で死んでもいないし、生きようと思ってもいない。食べる前から口に入れたくない人工着色料で毒々しい、まがい物の駄菓子だ。

俳優の力でかろうじて成立している映画。池内博之、小峰麗奈、中村麻美の若手俳優が好演しており、収穫はあった。

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