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「ビッグ・フィッシュ」職人、ティム・バートン

2005-10-18 21:55:25

テーマ:(は行)

夢で見たような水中の映像。水の音。タイトル通りの「BIG FISH」が泳ぐ。ティム・バートン・フィルムだ。

結婚式のスピーチに父親がいつもの自慢話。1,000回も聞かされた。いつも同じオチ。あり得ない作り話で満場の喝采を浴びる。いたたまれない息子である花婿。映画を見る人は100パーセント息子に感情移入する。この滑り出しが肝心だ。

映画作家としてのティム・バートンに敬服した。嘘っぽく「クサイ」話をどのように映画にするか。最高の演出と表現技術が使われている。これが才能ある映画作家の腕の冴えなのだ。「映画」とは何か。それを強く思い知らされる作品だ。

最後の物語は息子が語る。赤い照明が父親の顔に当たるところから、涙がこみ上げて止めることが出来なかった。そこからの10分ほど、すべてのことが理解される目覚ましい場面が続く。人間には「物語」が必要で「映画」もそのためにある。予想もしなかったメッセージが蕩々と語られる。素晴らしい映像。音楽。物語。それらすべてのために流す涙だ。人生の意味と無意味を思って流す涙だ。
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中井英夫の「虚無への供物」を思い出した。反探偵小説、アンチ推理小説の傑作だ。死ぬものである人間の短く長い人生の、意味無意味を語る。

年老いて病気の父親の姿を息子の目を通して描いていく。息子は父親を愛せない。山ほど語られた「たわごと」を嫌っている。

回想の父親は常に華々しい活躍をする。野球でもフットボールでも。生まれ故郷の街では身長5メートルの「ジャイアント」から街を守る。助けたジャイアントと旅に出かける。旅先では、誰にも知られない不思議で美しい村に迷い込む。アジア人もヒスパニックも黒人もいない、理想のアメリカの村。美しい娘たち。楽しい語らい。誘惑を断ち切って旅は続く。ジャイアントとともにサーカスで仕事をする。見初めた美しい女性のためだ。苦労してその女性の愛を勝ち得る父親。幸せもつかの間、召集令状が。泣く泣く戦地に赴くが、そこでも信じられない大成果を上げる!本国では戦死したものとされ、悲しい手紙が新婦の許に届く・・・・・。
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子供時代の魔女が怖美しい。ジャイアントのくだり、理想郷での暮らし、サーカスの場面、すべてがティムの世界だ。ファンタジーに満ちている。ジャイアントのフリークぶり。白人だけの村は気味が悪いほど美しい。サーカス一座の漫画。色彩。戦地でのコメディ。北朝鮮のような共産国家への揶揄。シャム双生児の美女。

これらすべてに息子の意識のフィルターがけられている。語られる話はすべて胡散臭いホラ話にしか見えない。ほら男爵かドン・キホーテか。だんだん退屈な気分で苛立ってくる。見ている俺は息子の気持ちに完全にシンクロしている。わかったわかった、と言いたくなる。
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ちゃんと父と話そうとする息子。向かい合うが父にはぐらかされてしまう。落胆し失望する息子。誰もが息子に共感するだろう。そこがティムの演出のうまさだ。

書類を整理していて、父の別の生活を見つけ出す息子。住所を頼りにその村を訪ねる。「たわごと」に出てきた村の名前だ。やはり語られる話は氷山の一角で、隠されている物語があったのだ。

映画は見ている俺の予測を裏切っていく。語られた物語と事実は違っている。そのことは予測通りなのだが、どのように期待が裏切られるのか見て欲しい。物語と真実。どちらも大事なのだ。
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息子と父の和解物語、心温まる泣ける話、と思ったら少し違う。人の死を描いた作品だ。映画全体が「弔辞」そのものだ。誰の葬式にも使える普遍化された「弔辞」。人の一生とはこのようなものだ。ファンタジー版「お葬式」だ。見る価値がある。見て泣いてくれ!!

ウンパ・ルンパがハンプティ・ダンプティでしたね。ガムのお母さんが出ていましたね。ティム組の仕事でした。お父さんがティム・バートン自身に見えて、映画で自分の葬式をやっているようでした。

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