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「ブラザーズ・グリム」シニカルな大人向けメルヒェン。

2005-12-08 18:38:24

テーマ:(は行)

「Bingo!」って何語でしょうか?


「ビンゴ・ゲーム」から、「やったー!」とか、「当たり!!」と叫ぶ言葉ですよね。それがフランス訛りだと「バンゴ!」になるのでしょうか?


俺は第三外国語のフランス語で、数えることや女の子を口説くことだけを習ったので、他のことはすっかり忘れました。でも、テリー・ギリアムもフランス語に関して俺と同程度の知識しかないみたい。ドイツ語に関しても。もちろんイタリア語も。タクシーに乗ってプレスト、プレスト!!と叫ぶと、かっ飛ばす、とか、うるさいガキには、ピアノ!と怒鳴りつけるとか、バス停はフェルマータ?そのくらいしか知りません。


ドイツ民族にはデモーニッシュ(悪魔的)な感情が潜んでいて、時代の節目に鬱積した暗いエネルギーが吹きこぼれてきます。魔女狩りしかり、宗教改革しかり、ナチス・ドイツしかり。ベルリンの壁崩壊もついこの間のことですよ。「魔女とカルトのドイツ史」(談社現代新書)でさらっと読んでみてください。

浜本 隆志
魔女とカルトのドイツ史

ドイツの暗い森を舞台としたこの映画は、森の中を一人で歩く少女がさらわれていくドキドキする場面があって、時節柄正視できない気持ちになります。アメリカでは自分の子供を一人で森を歩かせるようなことをしたら親が逮捕されます。でも、ここは300年前のドイツの森の中。赤づきんは木の実を摘み、ヘンゼルとグレーテルは道に迷います。


この地域を占領したフランスの将軍は、俺と同じで、一切のオカルトを信じません。魔術も伝説も一切を否定します。このフランス人と、デモーニッシュ・ドイツの対比が面白く意地悪に描かれます。ドイツは未開で、田舎で、真っ黒な豚の血のソーセージとザワーブラーテン(酸っぱいキャベツ)を食べます。


グリム兄弟は、村の言い伝えや呪いを解いて回る「呪い魔術バスターズ」です。困っている村人から、魔女や悪魔の様子を聞き出し、綱と滑車で「魔物」を演出して、それを打ち負かして見せ、金を巻き上げるのです。魔術や呪いなどないと一番知っているのがグリム兄弟です。


マット・デイモン演じる兄ウィルは、まったくの現実主義者。金と快楽を愛します。アメリカンですね。ヒース・レジャー演じる弟のジェイコブは、子供の頃、妹が病気になって牛を売りに行き、うまいこといわれて金を巻き上げられ、豆をつかまされるお人好し。妹は死んでしまいます。この映画はファンタジーの代償がどれほど高く付くか、過剰に描きます。


いつものように一仕事終えて騒いでいると、合理主義の固まりフランスの将軍が二人を拘束します。実は、行方不明の女の子たちがたくさんいるので、お前たちに解決して欲しい、という依頼。


二人が事件に関わりはじめると、次々に不思議なことが・・・・・。


「呪われた狩人」のところに出かける場面。村人がその猟師の話をすると忌ま忌ましそうに「あいつは呪われている」といって、唾を吐きます。実際にその「呪われた狩人」のところに行く二人。狩人を見て(美しい女なのですが・・)思わず二人がすることが可笑しくて!爆笑しました。(館内は、最初から最後まで俺の笑い声しかしませんでした・・・・)。


カルチャーギャップ・ネタや、言葉遊びネタ、タイミングのギャグなど、笑いがいっぱい詰まっていて、往年の「モンティ・パイソン」の、なんだか不思議なコントを見ているようでした。愚か者二人組も出てきます。主人公の後ろに映っている、変てこな登場人物がにやにやしていたり、かっこつけていたり、白塗りのモーツァルトだったり!髪型が珍妙だったり。細部がにやにや笑いで固められているのです。全部、ふざけて作っている感じ。


劇場では子供が親に連れらて見に来ていましたが場違いでした。子供には理解不能でしょう。何の教訓も得られないし。とってつけたような「夢って愛って・・・」というような話もありますが、毒にこそなれ薬になんかなりません。こんなふざけた作品をにやにや喜んで見るのは俺ぐらいかも知れません。


高い塔の屋根を歩くジェイコブの場面は、はらはらしました。鏡の中の魔女の、こわ綺麗なこと!俺なら簡単に心臓にぐっさり刺されてしまいます。


全体の構成や、拷問場面、虫がいっぱい出てくるところなど「インディアナ・ジョーンズ」そのままでしたね。


さらわれた子供たちはみんな無事に戻ってきますので、ご安心を。童話ですよ、といいながら、皮肉な意地の悪い映画を作ってみました、というところでしょうか。俺は楽しみました。素直なニホンジンには向きません。なんだこれ!と怒って帰る人が多いようでした。世の中斜めに生きている人におすすめ。

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コメント

初めまして。血のソーセージで着ました。

「ドイツは未開で、田舎で、真っ黒な豚の血のソーセージとザワーブラーテン(酸っぱいキャベツ)を食べます。」- ルネッサンス期と言う事でしょうか?フランスの血のソーセージ文化がその頃もまだ「異教」と思われていたとのでしょうか、興味あります。フランスの地方色にも関わっているような感じですね。

投稿: pfaelzerwein | 2006年2月18日 (土) 16時34分

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» 充血腸詰めがつるっと [Wein, Weib und Gesang]
ブルート・ヴルストは、豚の血と膏身を香辛料を入れて煉ったソーセージである。世界的に最も古いソーセージ類と言う。ローマ人の戦勝のお祝いの食事であった。そのような謂われがあるからか、ローマ人の町ケルンでは、特産のケルチュ・ビーアにこれを食すと言う。 旧約聖書の教えからユダヤ教では血の入った食事はご法度だが、中世初期にはキリスト教もこれを異教徒の食物として禁止しようとしたと言う。民衆の強い反感... [続きを読む]

受信: 2006年2月18日 (土) 16時36分

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